老後に賃貸に住むか持ち家に住むか、とても迷う方が多いです。
例えば、気軽に引っ越せる賃貸に対し、持ち家は簡単には住み替えられないなど、それぞれにメリットとデメリットがあります。
高齢になると住まいに求める条件は変わってくるため、老後のライフスタイルなどを考慮し、理想に近いほうを選びましょう。
この記事では、賃貸と持ち家の特徴や、老後の住まい選びのポイントなどを解説します。
目次
老後の住まいを決めるときの考え方
老後の住まいを決める前に、求める環境を整理することが大切です。
例えば子どもが独立すると、部屋数が多い家は持て余してしまうかもしれません。
また、身体面やライフスタイルの変化を考慮する必要もあります。
例えば、階段の上り下りが辛くなることは高齢者によくある悩みです。
運転免許を返納することで、立地に不便を感じるようになったという意見もあります。
このように、歳を重ねるにつれて住まいに求めるものは変わってきます。
快適な老後生活を送るために、どのような環境で老後を過ごしたいのかをゆっくりと考えてみましょう。
老後に賃貸で暮らすメリット
老後に賃貸で暮らすメリットは、主に以下があります。
- 初期費用を抑えられる
- ローンのリスクがない
- 気軽に引っ越しができる
- セキュリティが安心
- 高齢者向けの賃貸を選べる
それぞれのメリットについて、詳しくチェックしていきましょう。
初期費用を抑えられる
賃貸は、持ち家に比べて初期費用を抑えられます。
持ち家を購入する際は、手付金として購入物件の5〜10%程度の費用を現金で支払わなければいけません。
これに対し、賃貸に住む場合にかかる初期費用は、家賃5ヵ月分程度に収まるのが一般的です。
ローンのリスクがない
住宅ローンの支払いがないことも、賃貸ならではのメリットです。
住宅ローンは返済期間が長いうえに、返済中に自然災害が発生すれば、持ち家に被害が出る可能性があります。
精神的な負担も考慮すると、住宅ローンのリスクがないのは大きな魅力でしょう。
気軽に引っ越しができる
また、賃貸はライフスタイルの変化に合わせて気楽に引っ越すことが可能です。
そのときに必要な部屋数・間取りの住まいを選べたり、老人ホームへの入居を検討する際も賃貸なら住み替えがしやすかったりします。
セキュリティが安心
賃貸にはオートロックや防犯カメラが設置されている物件が多く、セキュリティ面でも安心です。
セキュリティ対策のためには、空き巣などの侵入強盗被害の発生を防げるように、侵入にかかる時間を5分間防ぐことが大切だといわれています。
これは、空き巣などの侵入強盗犯は侵入までに5分かかると約7割が強盗を諦め、10分以上かかると大半が諦めているというデータ(※)があるためです。
そのため、空き巣などの侵入経路になる玄関の鍵廻りや窓廻りの防犯対策によって、侵入にかかる時間をどれほど長く延ばすことができるかが重要視されています。
賃貸物件の玄関に防犯錠玄関ドアを取り付けられていたり、住居の窓に防犯合わせ複層ガラスなどを活用されていたりする場合には、よりセキュリティ面で安心できるでしょう。
ちなみに、防犯合わせ複層ガラスはCPサッシとも呼ばれており、ガラスの破壊に5分以上かかるように設計されています。
ホームセキュリティを導入している賃貸住宅も、より安心できるでしょう。
(※)参考:住まいる防犯110番
高齢者向けの賃貸を選べる
昨今、バリアフリー設備が充実した高齢者向け賃貸住宅も増えています。
エレベーターやスロープがあったり、段差が少ない設計になっていたりなど、高齢者が暮らしやすい賃貸住宅が選べることもメリットでしょう。
入居・居住支援サービスや介護サービスを実施している場合もあります。
老人ホームへ入居するまでではないものの、高齢でも安心して暮らせる部屋に入居したいという方におすすめです。
老後に賃貸で暮らすデメリット
一方で、老後の賃貸暮らしには以下のデメリットが考えられます。
- 一生家賃を払い続ける必要がある
- 好きなようにリフォームができない
- 契約や更新ができない可能性がある
これらのデメリットを詳しくチェックしていきましょう。
一生家賃を払い続ける必要がある
賃貸のデメリットとして、家賃を一生払わなければいけない点が挙げられます。
定年を迎えて収入が年金だけになれば、家賃の支払いは大きな負担となるでしょう。
さらに賃貸は更新があるため、更新料や火災保険料も必要です。
家賃を払い続けていけるかどうか、家賃以外の支出も含めて老後の家計の収支バランスを確認しておくようにしましょう。
好きなようにリフォームができない
また、好きなようにリフォームできない点もデメリットの一つです。
借主には原状回復義務があり、許可なく間取りを変えたり、壁に穴を開けたりできません。
賃貸物件の場合には、大家さんや管理会社がメンテナンス費用を負担してくれることはメリットですが、基本的に自身でのリフォームはできないと理解しておきましょう。
契約や更新ができない可能性がある
気軽に引っ越せるのは賃貸の魅力ですが、高齢になるほど契約や更新が難しくなる点には注意が必要です。
定期的かつ安定した収入がないとみなされることから、高齢者は契約や更新を断られるリスクが高くなります。
住み替えしやすいメリットはあるものの、物件の選択肢が狭くなる可能性があることを知っておきましょう。
老後に持ち家で暮らすメリット
老後に持ち家で暮らすメリットとして、以下のものが挙げられます。
- 自分の資産になる
- 自由にリフォームできる
- ローンを完済すれば負担が軽くなる
それぞれのメリットを詳しくチェックしていきましょう。
自分の資産になる
持ち家の大きなメリットは、自分の資産になることです。
賃貸物件の場合には家賃を払い続けても自分の資産になりませんが、持ち家の場合にはローンを完済すると自分の資産として残せます。
子どもへの財産として残すこともできますし、賃貸に出して家賃収入を得ることもできます。
持ち家の場合には、必要なときにまとまった資金源にもなることも安心でしょう。
自由にリフォームできる
さらに、持ち家は自由にリフォームも可能です。
子どもの成長に応じて間取りを変更したり、身体の変化に合わせてバリアフリーにしたりして、時々のライフスタイルに適した住まいに変えられます。
また、気分に合わせて壁紙の張り替えをおこない、部屋の雰囲気をガラッと変えられることもメリットの一つでしょう。
ローンを完済すれば負担が軽くなる
住宅を現金で一括購入するケースは少ないでしょう。
そのため、持ち家は住宅ローンを組んで購入するのが一般的ですが、ローンを完済してしまえば、金銭的な負担は軽くなります。
完済するまでは毎月ローン支払いの負担があるものの、賃貸の場合一生続く家賃の負担がないのはメリットといえるでしょう。
老後に持ち家で暮らすデメリット
反対に、老後に持ち家で暮らすデメリットは以下のとおりです。
- 購入費用がかかる
- 税金や維持費がかかる
- 気軽に引っ越しができなくなる
持ち家で暮らすデメリットについても、詳しくチェックしていきましょう。
購入費用がかかる
持ち家のデメリットは、購入時に多額の費用がかかることです。
持ち家を購入するためには、頭金と購入諸費用分のまとまった資金を用意しなければいけません。
購入のために必要な諸費用には、ローンのための費用や登記手数料、物件仲介手数料、不動産取得税などがあります。
一般的に、頭金と購入諸費用などを合わせた初期費用の相場は、物件価格の3~10%ほどだとされています。
例えば3,000万円の住宅を購入した場合、初期費用が物件価格の10%だとすると、300万円を用意しなければなりません。
そのため、ある程度の蓄えがなければ持ち家を購入するのは難しいでしょう。
税金や維持費がかかる
税金や維持費が必要となることも、持ち家のデメリットの一つです。
持ち家を所有している場合には、毎年固定資産税を納付しなければいけません。
固定資産税の納付は、ローンを支払い終わっても自宅を所有している限りは続きます。
加えて、持ち家の場合は維持費や修繕費が必要です。
例えば分譲マンションに住む場合、住宅ローンのほかに修繕積立金と管理費を支払う必要があります。
戸建てなら毎月の維持費はかかりませんが、住宅の修繕時にはまとまったお金が必要です。
また、持ち家の場合には、建物と家財両方に火災保険をかけることが一般的です。
家財のみに火災保険をかける賃貸物件の場合よりも、保険料が高くなる恐れがあります。
気軽に引っ越しができなくなる
持ち家にした場合には気軽に引っ越すことができないことも、デメリットの一つです。
持ち家の売却には時間と手間がかかるほか、売却価格によっては住宅ローンが残ってしまう可能性があります。
経済的な負担を考慮すると、持ち家からの引っ越しは簡単なことではないでしょう。
持ち家と賃貸のメリットとデメリットを詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>>持ち家と賃貸はどちらがお得?それぞれのメリットとデメリットを徹底比較!
老後に暮らす住まいの選びのポイント
老後に暮らす住まいを選ぶ際は、以下のポイントを基準に考えてみましょう。
- 何歳から年金を貰い始めるか
- 老後も元気なうちは働き続けるか
- 老後に楽しみたい趣味はできるか
- 立地は適切か
- 間取りが老後の暮らしに最適か
それぞれのポイントを詳しく解説します。
何歳から年金を貰い始めるか
老後の住まいを検討する際は、何歳から年金を貰い始めるかが重要なポイントです。
公的年金の受給は原則65歳からですが、受給開始を早めたり伸ばしたりする制度があります。
年金を貰い始める時期によって、住まい探しのタイミングにおける貯金額は変わってきます。
家計の収支を見直し、住宅にかけられる予算を考えておくといいでしょう。
老後も元気なうちは働き続けるか
老後の住まい選びでは、いつまで働くかどうかも押さえておくべきポイントです。
年金だけで生活するのが難しい場合、健康であれば定年後に働くのも一つの手です。
老後の元気なうちに働いていれば、その分収入を得られます。
もし老後も働くのであれば、会社への通いやすさを考えて住まいを決めるといいでしょう。
老後に楽しみたい趣味はできるか
老後の住まいを考える際は、引っ越しをしても失いたくない趣味や、老後になってから始めたい趣味ができるかどうかも考慮しましょう。
例えば、ガーデニングを始めたいなら庭が必要です。
ウォーキングやゲートボールを楽しみたいなら、近くに公園がある場所に住むのがいいでしょう。
立地は適切か
老後の住まいを検討する際は、年をとったときに住みやすい立地かどうかも考慮に入れましょう。
具体的には、下記のような場所へのお出かけが大変でないかの確認が大切です。
- 病院
- スーパーやドラッグストア
- よく利用する娯楽施設
- 最寄りのバスストップ
- 公共交通機関の最寄り駅
また、坂道が多くないかも重要なため、老後の住まいを決める前にチェックしておきましょう。
事前には確認しにくいことかもしれませんが、これらに加えて老後の生活を楽しめるようなコミュニティーがあるかどうかも、生活を充実させる重要なポイントの一つです。
間取りが老後の暮らしに最適か
老後の住まいを検討する際は、住宅の間取りが老後の暮らしに最適かどうかも大切でしょう。
高齢者になると、筋力低下などによって体の動きが衰えてしまいます。
体の動きが衰える高齢者は家の構造によっては不便に感じてしまったり、住宅内での転倒事故が多発しているといわれているため、住まいの間取りもしっかりとチェックしましょう。
また、室内でも温度差があることによってヒートショックを起こしてしまうことがあります。
入浴時ではなくても、死亡事故につながる可能性もあるため注意が必要です。
高齢者に優しい住まいかどうかを考える際には、以下のような点に注意しておきましょう。
- 段差がないバリアフリーの設計になっているか
- 空調設備は万全か
- しっかりとした断熱性能があるか
- 廊下の幅が狭くないか、車椅子でも通れるか
- 出入り口の幅は車椅子でも通れるだけの大きさがあるか
- トイレや浴室が寝室に近いか
- 床は滑りやすくないか(特にトイレや浴室など)
- トイレや浴室のスペースが広く、介助者がサポートしやすい状態か
- ガス漏れなどの警報設備があるか
- 室内全体が明るく感じるようになっているか
また、滑りにくい床材にしたり、手すりを設置したりなども、高齢者に優しい住まいづくりのポイントです。
日常生活に必要不可欠なキッチンや浴室、トイレなどの水回り設備が2階にあると、体の動きが衰えて階段を上がるのが大変になってしまった場合に生活しづらくなってしまいます。
水回り設備はまとめて1階に設置しておいたり、将来的にリフォームで1階に設置できるように1階に給排水管を作っておいたりなど、工夫するのがおすすめです。
今後、介助者がサポートするかもしれないことを考慮すると、トイレや浴室のスペースは広くとっておくといいでしょう。
浴室やトイレの扉を引き戸にすると、スペースを活用しやすくなるためおすすめです。
老後、体が衰えて動きにくくなると、自室で過ごす時間が長くなります。
生活の拠点となる自室から、トイレや浴室などの生活に必要な水回り設備が近い設計になっているか、車いすでの生活になった場合でもスムーズに動けるようなスペースがあるかどうかもチェックしてください。
これらのことに気を配り、快適な住まいを手に入れましょう。
老後に家賃やローンを払い続けるときの注意点
老後に家賃を払い続けたり、ローンを返済したりする場合は、無理なく支払える金額に収めることが大切です。
老後を迎えると、収入が減少する方がほとんどです。
そのうえ、身体のどこかに不調が出る可能性が高くなり、予定外の医療費が必要になることもあります。
もし年金だけに頼る生活を送っていると、預貯金を切り崩していくことも考えられます。
生活していくうえでは日々さまざまな出費が発生するため、余裕を持った資金計画を立てるようにしましょう。
まとめ:老後の住まいは体力とお金周りを意識して選ぶことが大切
老後の住まい選びでは、年を重ねたあとを想像し、求める条件を洗い出すことが大切です。
身体面の変化はもちろん、年金を貰い始める時期や老後の趣味など、ライフスタイルに合わせた理想の住まいを考えてみてください。
そのうえで、賃貸と持ち家のメリット・デメリットを比較し、自身に合う住まいを選びましょう。
もし賃貸物件を検討しているなら、病院など施設名から物件を探せる賃貸スタイルがおすすめです。