賃貸物件への入居を希望する際に、入居を認めるかどうかの審査がおこなわれます。
入居希望者が高齢の場合には、入居審査に通りにくくなるという話も実際にあります。
この記事では、なぜ高齢者は賃貸物件が借りにくいのかを詳しく解説します。
高齢者が賃貸物件を借りるために知っておくべきポイントもあわせてご紹介するので、これから賃貸物件への引っ越しを考えている方は参考にしてください。
目次
高齢者が賃貸を選択する理由
高齢者の単身世帯のうち、借家に住んでいる方の割合は33.5%です。
そもそも高齢者が賃貸物件での生活を選択する理由は、大きく分けて以下の二つがあります。
- 自宅を購入しなかったから
- 自宅を売却したから
それぞれの理由を詳しく確認していきましょう。
参考:総務省-「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」
自宅を購入しなかったから
高齢者が賃貸物件での生活を選択する一つ目の理由は、今まで自宅を購入していなかったためです。
マイホームは、結婚や出産などの人生の節目で購入するケースが多いです。
当然のことながら、マイホームを購入せず、賃貸での生活を続けている方もたくさんいます。
購入する機会がなかったり、タイミングが合わなかったり、転勤が多かったりと、マイホームを持っていない理由はさまざまです。
マイホームを持たずに高齢者になった方は、これからも引き続き賃貸での生活を考え、年を重ねても住みやすい物件へ引っ越しを考える機会もあるでしょう。
自宅を売却したから
高齢者が賃貸物件での生活を選択する二つ目の理由は、自宅を売却したからです。
高齢になると、相続税への対策を講じる方が増えます。
相続税の節約や生前整理として早めに自宅を売却し、賃貸へと引っ越すケースが多いです。
また、子どもが独立して夫婦だけの生活になったことで、家が広すぎると感じて自宅を売却するケースもあります。
高齢者が賃貸物件を借りにくい理由は?
大家さんに対しておこなわれたアンケートでは、8割もの大家さんが高齢者の入居に対して拒否感を示していることがわかりました。
高齢者が賃貸物件を借りにくいと考えられている理由は、大きく分けて以下の三つがあります。
- 体調面の問題
- 金銭面の問題
- 安全面の問題
これらの理由を詳しくチェックしましょう。
参考:国土交通省-「新たな住宅セーフティネット制度による居住支援の状況」
体調面の問題
高齢者が賃貸物件を借りにくい一つ目の理由は体調面の問題です。
高齢になると、若い世代と比べて体調が悪化するリスクが高くなります。
特に一人暮らしの高齢者世帯であれば、体調が悪化して倒れてしまっても、誰にも気付いてもらえないこともあります。
一人暮らしではない場合でも、どちらかが入院した際は一人暮らしと同じ状態になってしまうでしょう。
また、体調を崩して医療費や薬代がかさむと、金銭面の問題が生じることもあります。
金銭面の問題
高齢者が賃貸物件を借りにくい二つ目の理由は金銭面の問題です。
高齢者の場合、定年を迎えて仕事を引退し、年金と貯金で生活を送っている方が多いでしょう。
収入源が限られている状態のため、貸主は「家賃を滞納せずにきちんと支払ってもらえるだろうか」と不安になってしまうのです。
安全面の問題
高齢者が賃貸物件を借りにくい三つ目の理由は安全面の問題です。
自宅内で火事が起きたり、お風呂で溺れたりするなどの事故発生率は、高齢者ほど高くなります。
事故のリスクが高まるため、貸主が高齢者に貸すことをためらうケースは少なくありません。
参考:厚生労働省:人口動態統計年報 主要統計表(最新データ、年次推移)
何歳から賃貸物件を借りにくくなるの?
民間会社の家賃債務保証の審査状況は、年齢によって大きな差があります。
年代 | 通りやすい | 審査落ちが散見 | 審査落ちが多い | 申し込みほとんどなし・影響なし |
---|---|---|---|---|
20代未満 | 40.4% | 15.4% | 3.8% | 40.4% |
20代 | 54.7% | 34% | 0% | 11.3% |
30代 | 75.5% | 13.2% | 0% | 11.3% |
40代 | 73.6% | 15.1% | 0% | 11.3% |
50代 | 67.9% | 18.9% | 1.9% | 11.3% |
60代 | 49.1% | 28.3% | 7.5% | 15.1% |
70代 | 22.6% | 26.4% | 9.4% | 41.5% |
出典:国土交通省-「家賃債務保証の現状」
20〜50代では半数以上が審査に通過しやすいのに対し、60代では「通りやすい」が50%以下でした。
70代では「通りやすい」の割合がさらに減少していることから、賃貸物件を借りるのが難しくなるのは60〜70代からだと考えられるでしょう。
特に借りにくい高齢者とは?
高齢者のなかでも、以下に当てはまる方は特に物件を借りにくいとされます。
一人暮らしである
特に物件を借りるのが難しいとされるのは、高齢者が一人で暮らすケースです。
一人暮らしの高齢者が部屋で死亡して放置されると、事故物件として扱われます。
建物の不動産価値が下がることにもつながるため、一人暮らしの高齢者は入居を断られる傾向があります。
>「告知事項あり物件とは?賃貸契約をする前に知っておくべき理由」
保証人がいない
保証人がいないことも物件を借りにくい理由の一つです。
特に高齢者の場合は「親族や配偶者がすでに他界している」「身内と疎遠である」などの事情から、保証人が見つからないことが多いです。
家賃保証会社を利用する方法もありますが、物件によっては親族を保証人にすることが義務付けられています。
せっかく見つけた物件でも、保証人を立てられないために入居できないケースは少なくありません。
年収が少ない
特に物件を借りにくい理由として、年収が少ないことも挙げられます。
内閣府の調査によると、65歳以上の世帯のうち50%以上が年金のみを収入源としていることが明らかになりました。
年金だけでは十分な収入が見込めず、生活費用が不足することも考えられるでしょう。
年収が少ないことによって家賃の支払い能力が不安視され、入居を断られることは珍しくありません。
参考:内閣府-「令和2年版高齢社会白書」
高齢者が賃貸物件を借りやすくなるポイント
先述したとおり、体調面・金銭面・安全面の観点から高齢者は賃貸物件を借りにくくなっています。
しかし、高齢者でも賃貸物件を借りやすくするためのポイントがあるのでご紹介しておきます。
- 公営の賃貸住宅を選ぶ
- 各種サービスや制度を利用する
それぞれ詳しくチェックしましょう。
公営の賃貸住宅を選ぶ
高齢者が賃貸物件を借りやすくなる一つ目のポイントは、公営の賃貸住宅を選ぶことです。
公営の賃貸住宅とは、自治体が運営している市営住宅などのことを指します。
自治体によって公営住宅の入居条件や備え付けの設備は違うものの、高齢者が暮らしやすいように配慮された賃貸物件を用意しているケースもあります。
そのため、公営の賃貸住宅は、シニア世帯にとてもおすすめです。
ただし、公営の賃貸住宅は人気が高いため抽選になる可能性が高いということを知っておきましょう。
各種サービスや制度を利用する
高齢者が賃貸物件を借りやすくなる二つ目のポイントは、各種サービスや制度を利用することです。
高齢者が借りやすくなる各種サービスや制度には、家賃債務保証や高齢者向けUR賃貸住宅などがあります。
また、自治体によっては、実際に部屋を借りたあと、独居老人の見守り支援事業などのサポートが用意されている場合もあります。
ここでは、高齢者が利用すべき各種サービスや制度をチェックしていきましょう。
家賃債務保証
高齢者が賃貸物件を借りやすくなる各種サービスや制度として、家賃債務保証が用意されています。
家賃債務保証は、一般財団法人高齢者住宅財団などがおこなっているサービスです。
家賃債務保証を利用すると、保証会社に家賃の連帯保証人のような役割を果たしてもらえます。
そのため、貸主から見たときの金銭的な不安の軽減が可能となります。
連帯保証人を確保しにくいと感じている借主から見ても便利なサービスといえます。
高齢者向けUR賃貸住宅
高齢者が賃貸物件を借りやすくなる各種サービスや制度として、高齢者向けのUR賃貸住宅も用意されています。
高齢者向けの住宅には、高齢者向け優良賃貸住宅や、健康寿命サポート住宅、シルバー住宅、高齢者等向け特別設備改善住宅、URシニア賃貸住宅(ボナージュ)などがあります。
高齢者向けUR賃貸住宅は、もともと高齢者のために造られているため、貸主も審査を厳しくすることもありません。
高齢者が生活しやすい賃貸物件の場所
ここでは、高齢者が生活しやすい賃貸物件の場所を二つご紹介します。
- 近くに家族が住んでいる
- 病院が近くにある
近くに家族が住んでいる
高齢者が生活しやすい賃貸物件の場所の一つ目は、近くに家族が住んでいる場所です。
高齢者の入居で不安視されるのは、やはり体調面の問題が大きいです。
近くに家族が住んでいる場所であれば、定期的に様子を見に来てもらえるため、安心して暮らせるでしょう。
病院が近くにある
高齢者が生活しやすい賃貸物件の場所の二つ目は、病院が近くにある場所です。
万が一の際にもすぐに医療を受けられるため、体調面への不安を軽減できるでしょう。
高齢者になると、ほとんどの方は病院にかかる回数が増えます。
利便性を高めるために、近くに病院がある賃貸物件を探すのがおすすめです。
まとめ:気軽に相談できる賃貸サイトを利用して高齢者でも理想の賃貸物件を探そう
今回は、高齢者が賃貸物件を借りやすくなるポイントなどを解説しました。
貸主は、高齢者相手だと金銭面でも体調面でも不安になるため、契約に至りづらいという問題点があります。
ただし、家族が近くに住んでいてサポートが受けられること、公営の賃貸住宅を選ぶことなど、ポイントを押さえれば借りやすくできるでしょう。
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