65歳を過ぎてから新しい住まいを探そうとしたとき、多くの人が想像以上の困難に直面します。「年齢を理由に入居を断られた」「保証人が見つからない」——こうした声は、決して珍しいものではありません。
国土交通省の調査によると、民間賃貸住宅のオーナーの約60%が「高齢者の入居に拒否感がある」と回答しています。しかし、超高齢社会を迎えた日本において、この問題は避けて通れません。本記事では、高齢者が賃貸物件を探す際の現実と、その壁を乗り越えるための具体的な方法を詳しく解説します。
ライター|F.A
大手不動産グループで17年間、現場実務から本社マーケティング、子会社の代表取締役まで経験。2023年に独立しコンサルティング会社を設立。現在は生成AIやデジタル戦略を活かし、不動産や飲食、広告など幅広い業界の成長を支援している。
目次
高齢者が賃貸物件を借りにくい5つの理由
1. 家賃滞納リスクへの懸念
賃貸オーナーが最も心配するのは、年金生活による収入の不安定さです。厚生労働省の統計では、65歳以上の単身世帯の平均年収は約200万円。この収入で家賃を継続的に支払えるか、オーナー側は慎重にならざるを得ません。
特に単身高齢者の場合、病気や認知症の発症により、家賃の支払いが滞るリスクを懸念する声が多く聞かれます。
2. 孤独死への不安
近年、社会問題として注目される孤独死。東京都監察医務院のデータによると、東京23区内での孤独死は年間約4,000件にのぼり、その約7割が65歳以上の高齢者です。
物件内での孤独死は、原状回復費用の増大や次の入居者募集への影響など、オーナーにとって大きなリスクとなります。このため、特に単身高齢者への警戒感が強くなっているのが現状です。
3. 保証人確保の困難さ
高齢になると、同年代の友人や親族も高齢化し、保証人を引き受けてもらうことが難しくなります。子どもがいない、あるいは子どもとの関係が希薄な場合、この問題はさらに深刻化します。
実際、全国賃貸住宅経営者協会の調査では、「保証人がいない」ことを理由に入居を断られた高齢者は全体の約40%にのぼることが明らかになっています。
4. 健康面での不安
階段の昇降、浴室での転倒、急な体調変化——高齢者の日常生活には様々なリスクが潜んでいます。バリアフリー対応でない物件の場合、事故のリスクは高まり、オーナーの管理責任が問われる可能性もあります。
5. 近隣トラブルへの懸念
認知症の初期症状による生活音の問題、ゴミ出しルールの理解困難など、高齢者特有の課題が近隣トラブルに発展することを心配するオーナーも少なくありません。
高齢者でも借りやすい物件の特徴と探し方
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)という選択肢
2011年に制度化されたサービス付き高齢者向け住宅は、2024年現在、全国で約27万戸まで増加しています。バリアフリー設計に加え、安否確認サービスや生活相談サービスが付帯しているため、オーナーの不安も軽減されます。
家賃は地域により異なりますが、東京都内では月額15万円〜25万円程度が相場。一般的な賃貸物件より高めですが、サービスの充実度を考慮すると、選択肢として検討する価値があります。
高齢者向け優良賃貸住宅を狙う
国や自治体が整備を進める「高齢者向け優良賃貸住宅」は、所得に応じて家賃補助が受けられる場合があります。東京都の場合、最大で月額4万円の家賃補助が受けられるケースもあり、経済的負担を大幅に軽減できます。
UR賃貸住宅の活用
UR都市機構が管理する賃貸住宅は、保証人不要で高齢者も比較的借りやすいのが特徴です。さらに、一定の条件を満たせば「高齢者向け優先申込制度」を利用でき、当選確率が上がります。
2024年時点で、全国に約71万戸のUR賃貸住宅があり、そのうち約30%がバリアフリー対応となっています。
関連記事:UR賃貸住宅のメリット・デメリット!気になる入居条件を解説
賃貸探しを成功させる7つの実践的アプローチ
1. 家賃保証会社の積極活用
保証人が見つからない場合は、家賃保証会社の利用が有効です。初回保証料は家賃の50%〜100%程度、更新料は年間1万円〜2万円が相場。高齢者専門の保証会社も登場しており、審査基準も比較的柔軟です。
2. 地域包括支援センターとの連携
各市区町村に設置されている地域包括支援センターでは、高齢者の住まい探しの相談も受け付けています。地域の不動産業者との連携があるケースも多く、高齢者に理解のある物件情報を得られる可能性があります。
3. 居住支援法人の活用
全国に約500団体ある居住支援法人は、高齢者の住宅確保を支援する専門組織です。物件探しから契約手続き、入居後の生活支援まで、包括的なサポートを受けられます。利用料は無料または低額で設定されているケースがほとんどです。
4. 見守りサービスの事前契約
民間企業が提供する見守りサービスに事前に加入することで、オーナーの不安を軽減できます。月額3,000円〜5,000円程度で、定期的な安否確認や緊急時対応が受けられるサービスが増えています。
5. 子どもや親族との連帯保証
可能であれば、子どもや親族に連帯保証人になってもらうことで、入居審査の通過率は格段に上がります。遠方に住んでいても問題ないケースが多いため、まずは相談してみることが大切です。
6. 複数の不動産会社を回る
高齢者への対応は不動産会社によって大きく異なります。1社で断られても諦めず、複数の会社を訪問しましょう。特に地域密着型の小規模不動産会社は、オーナーとの関係が深く、柔軟な対応をしてくれることがあります。
7. 早めの行動開始
高齢者の物件探しは時間がかかることを前提に、余裕を持って行動を開始することが重要です。理想は引っ越し予定の3〜6ヶ月前から情報収集を始めること。焦らず、じっくりと条件に合う物件を探しましょう。
知っておきたい支援制度と相談窓口
住宅セーフティネット制度
2017年にスタートした「新たな住宅セーフティネット制度」では、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度があります。2024年現在、全国で約80万戸が登録されており、専用の検索サイトで物件を探すことができます。
自治体独自の支援制度
多くの自治体が独自の高齢者向け住宅支援制度を設けています。例えば、世田谷区では「高齢者等住宅支援事業」として、民間賃貸住宅への入居時に最大15万円の助成金が支給されます。お住まいの自治体の福祉課や住宅課に問い合わせてみましょう。
社会福祉協議会の相談窓口
各地域の社会福祉協議会では、生活全般の相談に加え、住まいの相談も受け付けています。経済的に困窮している場合は、生活福祉資金の貸付制度を利用できる可能性もあります。
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成功事例から学ぶ賃貸探しのコツ
ケース1:75歳単身女性の場合
東京都内在住のAさん(75歳)は、夫の死後、広すぎる持ち家を売却し、賃貸マンションへの引っ越しを決意。当初は年齢を理由に5社から断られましたが、地域包括支援センターの紹介で高齢者に理解のある不動産会社と出会い、見守りサービス付きの物件に入居できました。
「最初は本当に部屋が見つからなくて途方に暮れましたが、支援センターの方が親身になってくれて、今では安心して暮らしています」とAさんは語ります。
ケース2:68歳夫婦の場合
定年退職を機に地方への移住を決めたBさん夫婦(68歳)。保証人の確保が課題でしたが、家賃保証会社を利用し、さらに3ヶ月分の家賃を前払いすることで、オーナーの信頼を得ることに成功。現在は海の見える賃貸住宅で第二の人生を楽しんでいます。
関連記事:シニア層(高齢者)に聞いた!賃貸物件を借りるときに困ったことランキング【アンケートデータあり】
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まとめ:諦めずに探せば必ず見つかる
高齢者の賃貸探しは確かに困難を伴いますが、決して不可能ではありません。重要なのは、早めの行動と適切な支援制度の活用です。
サービス付き高齢者向け住宅、UR賃貸住宅、住宅セーフティネット登録住宅など、高齢者を受け入れる物件は確実に増えています。また、家賃保証会社や見守りサービスの活用により、オーナーの不安を解消することも可能です。
一人で悩まず、地域包括支援センターや居住支援法人などの専門機関に相談することから始めてみてください。きっと、あなたに合った住まいが見つかるはずです。高齢期の住まい探しは、新しい生活への第一歩。前向きな気持ちで、理想の住まいを見つけましょう。
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