賃貸退去の立ち合いは本当に必要?知らないと損する「立ち合い不要」の真実とトラブル回避術

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ライター|F.A

大手不動産グループで17年間、現場実務から本社マーケティング、子会社の代表取締役まで経験。2023年に独立しコンサルティング会社を設立。現在は生成AIやデジタル戦略を活かし、不動産や飲食、広告など幅広い業界の成長を支援している。

引っ越しシーズン到来!退去立ち合い、本当に必要ですか?

春の訪れとともに、新生活への期待が高まる季節。しかし、新居への引っ越しを控えた多くの賃借人にとって、現在の住まいからの退去手続きは避けて通れない関門です。特に「退去時の立ち合い」は、仕事の都合や遠方への転居などで、時間調整に頭を悩ませる人も多いでしょう。

実は、すべての賃貸物件で退去立ち合いが必須というわけではありません。条件次第では立ち合い不要で手続きを完了できるケースも存在します。

本記事では、退去立ち合いの実態から、立ち合い不要となる条件、そしてトラブルを避けるための具体的な対策まで、徹底的に解説していきます。

【退去立ち合いの基本】なぜ多くの物件で「原則必要」?

立ち合いの本来の目的とは

賃貸物件の退去立ち合いは、貸主(大家・管理会社)と借主が一緒に室内の状況を確認し、原状回復の範囲や費用負担を明確にするための重要なプロセスです。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、退去時の室内確認は双方の認識のずれを防ぐ重要な手続きとされています。

立ち合いでは主に以下の点を確認します。

  • 壁や床の傷・汚れの状態
  • 設備の故障・破損の有無
  • 鍵の返却
  • 残置物の確認

立ち合いが「原則必要」とされる理由

多くの賃貸借契約書には「退去時は双方立ち合いのもと、室内点検を行う」という条項が含まれています。これは、後々のトラブルを防ぐための予防線です。

実際、全国の消費生活センターに寄せられる賃貸住宅の敷金返還に関する相談は、年間約1万3,000件にのぼります(2023年度国民生活センター調べ)。

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立ち合い不要となる3つのパターン

パターン1:管理会社の方針として立ち合い不要

近年、大手不動産管理会社を中心に、退去手続きの効率化を図るため「立ち合い不要」を標準とする動きが広がっています。特に単身者向けのワンルームマンションや、築年数の新しい物件では、この傾向が顕著です。

ある大手管理会社の担当者は次のように語ります。「弊社では2020年から段階的に立ち合い不要システムを導入しています。退去者の約7割が立ち合い不要を選択し、手続きの迅速化につながっています」

パターン2:契約書に「立ち合い不要」条項がある場合

賃貸借契約書を改めて確認してみましょう。「退去時の立ち合いは、借主の希望により省略できる」といった条項が含まれているケースがあります。この場合、正式に立ち合いを省略できます。

ただし、注意すべきは「立ち合いを省略した場合、管理会社の査定結果に従う」という付帯条件です。後から異議を申し立てることが困難になる可能性があります。

パターン3:双方の合意による立ち合い省略

契約書に明記がなくても、貸主と借主の双方が合意すれば、立ち合いを省略できます。遠方への転居や、仕事の都合でどうしても立ち合いが困難な場合は、管理会社に相談してみる価値があるでしょう。

立ち合い不要のメリット・デメリット

メリット:時間と手間の大幅削減

立ち合い不要の最大のメリットは、なんといっても時間の節約ができることです。一般的な立ち合いには30分から1時間程度かかり、さらに日程調整の手間も考慮すると、相当な負担となります。

実際に立ち合い不要で退去した30代会社員のAさんは「転勤先への引っ越し準備で忙しい中、立ち合いの日程調整をしなくて済んだのは本当に助かった」と振り返ります。

その他のメリット:

  • 遠方からわざわざ戻る必要がない
  • 管理会社の営業時間に縛られない
  • 対面でのやり取りによるストレスがない

デメリット:確認機会の喪失とリスク

一方で、立ち合いを省略することには明確なリスクも存在します。最大の懸念は、室内の状況を直接確認できないことによる認識のずれです。

立ち合い不要で退去後、高額な原状回復費用を請求されたBさん(40代)は「写真だけでは伝わらない細かな部分で、想定外の費用が発生した。立ち合いをしておけばよかった」と後悔を口にします。

主なデメリット:

  • 原状回復費用の査定に異議を唱えにくい
  • 入居時からあった傷を指摘できない
  • 退去後の室内状況を確認できない

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立ち合いなしで退去する際の5つの必須対策

1. 退去前の徹底的な写真撮影

立ち合いを行わない場合、写真記録が唯一の証拠となります。以下のポイントを押さえて撮影しましょう。

撮影すべき箇所:

  • 各部屋の全体像(四方向から)
  • 壁、床、天井の状態
  • 水回り(キッチン、浴室、トイレ)
  • 設備(エアコン、給湯器など)
  • 窓、サッシ、網戸
  • 収納内部

撮影のコツ:

  • 日付入りで撮影する
  • 傷や汚れは接写でも記録
  • 動画も併用し、全体の流れを記録

2. 入居時の記録との照合

入居時に撮影した写真や、入居時チェックリストがあれば、必ず照合しましょう。「この傷は入居時からあった」という証明になるためです。

もし入居時の記録がない場合は、記憶を頼りにでも文書化しておきましょう。

3. 管理会社への事前報告書の提出

退去前に、室内の状況を詳細に記載した報告書を管理会社に提出することを推奨します。以下の項目を含めましょう。

  • 各部屋の現状説明
  • 修繕が必要と思われる箇所
  • 入居時からあった不具合
  • 特記事項(ペット飼育の有無など)

4. 鍵の返却方法の明確化

立ち合いがない場合、鍵の返却方法を事前に確認しておく必要があります。一般的な方法は以下の通りです。

  • 郵送(簡易書留や宅配便)
  • 管理会社の郵便受けに投函
  • 指定場所への持参

必ず返却の証拠(配送伝票、受領書など)を保管しましょう。

5. 原状回復費用の見積もり確認

退去後、管理会社から原状回復費用の見積もりが送られてきます。内容を精査し、不明な点は遠慮なく質問しましょう。国土交通省のガイドラインでは、通常の使用による損耗は貸主負担とされています。

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【事例】立ち合い不要で起きやすい3つのトラブル

事例1:身に覚えのない破損の請求

退去後、「浴室の鏡に大きなヒビが入っている」として5万円の請求を受けたCさん。立ち合いをしていれば、その場で「そんな破損はない」と主張できましたが、後から証明することは困難でした。

対策: 浴室など湿気の多い場所は特に入念に撮影し、設備の状態を動画でも記録しましょう。

事例2:清掃不備による追加請求

「ハウスクリーニング代は敷金から差し引く」という認識でいたDさんは、退去後に「清掃不備による特別清掃費」として追加請求を受けました。

対策: 契約書の清掃に関する条項を確認し、どの程度の清掃が必要か事前に確認しましょう。可能な限り清掃した状態を写真で記録します。

事例3:残置物トラブル

不要な家具を「粗大ごみとして処分してください」とメモを残して退去したEさん。後日、処分費用として3万円を請求されました。

対策: 残置物は必ず自分で処分しましょう。やむを得ない場合は、事前に書面で合意を取りましょう。

プロが教える円満退去のための追加テクニック

退去通知は早めに、そして書面で

多くの賃貸借契約では、退去の1~2か月前までに通知することが定められています。口頭での通知はトラブルの元。必ず書面(メールでも可)で通知し、受領確認を取りましょう。

原状回復の「線引き」を理解する

国土交通省のガイドラインによれば、以下は通常貸主負担となります。

  • 畳の表替え、フローリングのワックスがけ
  • 壁紙の日焼けによる変色
  • 家具設置による床のへこみ
  • エアコン設置による壁の穴

一方、以下は借主負担となります。

  • タバコによる壁の黄ばみ、臭い
  • ペットによる傷、臭い
  • 不注意による破損
  • 手入れ不足によるカビ、サビ

退去費用の相場を知っておく

一般的な原状回復費用の相場(1Kの場合):

  • クロス張替え:1㎡あたり1,000~1,500円
  • フローリング補修:1箇所5,000~10,000円
  • ハウスクリーニング:15,000~30,000円

これらの相場を知っていれば、不当な請求を見抜きやすくなります。

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まとめ|立ち合い不要は便利だが、準備と記録が成功のカギ

賃貸物件の退去立ち合いは、確かに時間と手間がかかります。立ち合い不要で退去できれば、その負担から解放されるでしょう。しかし、それは同時に、自己防衛の機会を手放すことでもあります。

立ち合い不要での退去を選択する場合は、以下の点を必ず実行しましょう。

  1. 契約内容の再確認 – 立ち合いに関する条項を把握
  2. 徹底的な記録 – 写真と動画で現状を保存
  3. 事前の報告 – 管理会社とのコミュニケーション
  4. 相場の理解 – 不当請求を見抜く知識
  5. 証拠の保管 – すべての書類と記録を保存

退去は新生活への第一歩。トラブルなく、気持ちよく次のステージに進むために、この記事で紹介した知識とテクニックを活用してください。準備さえ整えれば、立ち合い不要でも安心して退去できます。あなたの新しい生活が、素晴らしいスタートを切れることを願っています。

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